第36回テーマ
Show
~伝えたい想い~

「ブラジル3部作」のエンヘードは2016年の「リオ」で完結。翌2017年、新たなエンヘードとして選ばれたのが「Show」でした。

発案者で、カルナバレスカ(総監督)を務めたのはマヨ(※敬称略、以下同じ)。セレージャ創立初期から活躍している女性ダンサーで、チーム屈指のエンターテイナーです。サンバ以外にも、R&B などを歌うなど、幅広いジャンルでステージに立ってきた経験から、「明るく華やかで、見栄えのするテーマがいい」と考え、「Show」を思いついたといいます。曲も、Show のイメージそのままに、明るく快活なメロディー。歌詞は「ひとりひとり輝け ステージに」「客席もステージも みんなが主役」など、楽しい Show をみんなで作り上げるようというメッセージが込められています。明るく華やかで、見栄えのするエンヘードにしたのは、明確な理由と戦略がありました。

「なんとか少しでも『5強』に近づきたいと思った。なんとしても順位を上げたかった」とマヨ。このころ、浅草サンバカーニバルの1部リーグは、比較的規模の大きい強豪5チームが毎年、上位5位以内を占めることが常態化していました。セレージャは1部リーグ昇格後、最高位が6位で、足踏みが続いていました。

「マイナー調で渋いテーマも素敵だけど、財力があり人数が多いチームだからこそ変化をつけて、楽しいパレードにすることができるが、セレージャはそんな人数はいないので、勝つためには明るさ、分かりやすさが必要だった」とマヨ。「Show というものは、演者が自分で楽しむだけではだめで、観客に楽しんでもらわないといけない。見てくれる人たちへ想いをのせて踊れば、いい踊りもできる。そんなことも伝えたかった」といいます。

こうしてできあがった渾身のパレードは、さまざまな趣向が凝らされていました。先頭のコミサォンは Show の「控え室」をイメージし、スターダンサーの等身大の写真や鏡をあしらいました。サーカスのアーラ(集団)では、かわいらしいライオンが火の輪をくぐる演出。アレゴリアはステージそのものを表現し、電飾の装飾も施しました。ハイーニャ(バテリアの女王)はわかとも。サテンドレスをイメージした金色の衣装に、アフロヘア。「ラスベガスの街に輝くネオンとミラーボールと黒人歌手」のイメージだそうです。

役になりきるために「日焼けサロンにがんがん通った。筋トレもめっちゃした」。パレード後、ダンサーは「一緒に写真を撮ってください」とよく観客にお願いされるそうですが、この年は「日本人はだれも来なかった。たぶんブラジル人だと思われた」そうです。

審査結果は、8チーム中7位。前年の8位から1つ順位を上げました。1部リーグに残留した上、5強に少しでも近づくという目標を果たした形です。「観客を意識して、想いを届ける」ことの意義をチームで共有したという意味で、セレージャのパレードを進化させたエンヘードだったとも言えます。

(写真提供 黒澤氏・みなと氏)

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